2021.12.2
お墓を近くに移動させたい!引っ越しにかかる費用と内訳を徹底解剖
家と同じように、お墓も引っ越しができるということをご存じでしょうか。
近年、「遠くてお参りに行けない」「もっと近ければ維持できるのに」などといった理由で、自宅の近くにお墓を移す人が増えてきています。
しかし、お墓は自分たちの意思だけで気軽に移動させられるものではなく、決められた手順を踏んで手続きをしなければなりません。
また例えばこれまでのお墓を出る、新しく建てる、など段取りを踏むごとにそれぞれ費用が発生します。
そこで今回は、お墓を引っ越しさせる際は、一体何にどれくらいの費用が必要となるのかということに焦点を当てて詳しく解説します。
目次
お墓を引っ越すってどういうこと?
お墓の引っ越しとは、簡単に言うと今お墓にある遺骨を新たに別の場所に移すことです。
正式にはお墓を移す行為を「改葬」といい、以下の4つのパターンがあります。
- 遺骨のみ移す
- 墓石ごと移す
- 遺骨の一部のみ別のお墓に移す
- 遺骨の一部を出して新たにお墓を建てる
-
遺骨のみを移動させるのであれば、手続きは比較的簡単です。
しかし遺骨がいくつもあったり、引っ越しさせるためにお墓を新しく建てたりする場合は、それなりに手間や費用がかかることを理解しておきましょう。
お墓の引っ越しにかかる費用の内訳は?
どのような形であれお墓や遺骨を別の場所に移す際は、大きく分けて2種類の費用を支払わなければなりません。
一つがもともとお墓があった場所に支払う費用、もう一つが新しく遺骨を納める場所に支払う費用です。
基本的には両方の費用が必要になるのが一般的ですが、遺骨を移す方法やその時の状況などによって不要とされる場合もあります。
遺骨を出す際に必要となる費用
まずは、お墓に納めていた遺骨を出す際に支払わなければならない費用について、順番に紹介します。
書類発行手数料
お墓を引っ越す、つまり改葬をする際は行政における手続きが必要です。
まずはそれまでお墓があった寺院や霊園に依頼して「埋葬証明書」あるいは「納骨証明書」を発行してもらいましょう。
お寺や霊園によって異なりますが、発行料は数百円~1,500円ほどとなっています。
同時に、引っ越し先となる墓地の管理者に連絡し「受入証明書」を作成してもらいます。
受入証明書は無料か、あるいは数百円で作成してもらえます。
「埋葬証明書」と「受入証明書」が揃ったら、納骨予定のお墓がある自治体に申請して「改葬許可証」を受け取りましょう。
こちらも無料としている自治体が多いですが、場合によっては1,000円程度の手数料がかかります。
撤去作業等の費用
誰の遺骨も残さず引っ越しをする場合には、それまでお墓のあった土地を更地にして返すのが原則です。
墓石を解体した後、完全に撤去し、お墓を建てる前の何もなかった状態に戻さなければなりません。
当然自分たちでは作業できないため、石材店に依頼することになります。
その際にかかる費用は、解体で出た石の処分費用などを含めて1㎡につき10~30万円程度が相場です。
ただし、お墓が急な山の斜面にあったり、極端に道が狭かったりすると追加で作業代がかかることもあります。
墓地からの指定がなければ、いくつか石材店に見積もりを依頼して検討するのがおすすめです。
また、上記はあくまでも処分代となっているため、これに加えて区画を更地にするための費用がかかります。
こちらは1㎡につき10~20万円ほどが相場となるので、高ければお墓の処分に50万円ほどかかることを知っておきましょう。
魂抜きの儀式費用
日本では昔から、何らかの理由でお墓から遺骨を取り出す際には「魂抜き」という儀式が行われてきました。
お墓にはご先祖様や仏様の魂が入っているとされ、それらを動かしたり処分したりする時には魂を抜く作業が必要と考えられてきたのです。
魂抜きの儀式は地域によっては「閉眼供養」などとも言われ、僧侶に読経供養をしてもらうのが一般的です。
しかし、3~5万円程度のお布施が必要になることから最近では儀式そのものを省く人も増えています。
その後は、いよいよ遺骨を取り出す作業ですが、自身で取り出すケースと石材店に依頼するケースの2種類があります。
これはお墓や納骨室の構造によっても異なり、簡単に遺骨を取り出せる構造であれば自身で取り出しても問題はありません。
石扉を開ける際に特別な道具が必要になる場合などは、無理に開けようとせず石材店に依頼しましょう。
その場合の費用は、遺骨一人分につき2~3万円が相場となります。
離檀料
お墓がお寺が運営する墓地にある場合、基本的にそのお寺の檀家という位置づけになります。
そのためお寺からお墓を撤去する、つまりその檀家をやめる際には、それまで手厚くお墓の管理や供養をしてくださったことに対して、
お礼の意を込めて離檀料を支払うのが一般的です。
離檀料はあくまでも気持ちの表れとして支払うものなので、明確に金額が決まっているわけではありませんが、数万円~10万円程度が相場のようです。
墓石の運搬費用
改葬でお墓の土地を更地に戻す際、墓石は解体せずにそのまま新しい墓地で使用するケースもあります。
その場合は、新しくお墓を移す先の管理者から許可を得ることが必須条件となりますが、許可があれば墓石を現地まで運んで設置しなおすことが可能です。
ただし、お墓の状態や移動距離などを考慮して見積もりを取ってみると、実際は新しくお墓を購入した方が安く済むケースも珍しくありません。
「できるだけ費用を抑えたい」という方は、しっかりと比較して決めましょう。
遺骨を移した先で必要となる費用
次に、遺骨を移転させる先で支払う費用について解説します。
墓地の使用料
新しく墓地の土地を取得する際には「永代使用料」を支払います。
これはいわゆる「墓地代」で、お寺や霊園の管理者に対して支払う土地の使用料のようなイメージです。
家の固定資産税のように毎年支払うわけではなく、お墓を建てる際に一度だけ必要になります。
永代使用料はお寺や霊園によって金額に幅がありますが、大体70万円前後のところが多いようです。
家を建てる際の土地代と同じようなもので、もともと地価が高いエリアでは永代使用料も高くなります。
お墓の新設費用
既存のお墓を移す場合は新設費用は不要ですが、新たにお墓を建てる場合はその費用を用意しておかなければなりません。
新設する費用は一概に言うのが難しく、最低でも70万円程度、高価なものになると200万円以上するお墓もあります。
お墓をどこに立てるのか、どんな石を使うのか、墓石以外に部品を用意するかしないかなどによって価格が大きく変わってくるからです。
一見、既存のお墓を使用するパターンと比べると高くつく印象がありますが、運搬費用もそれなりに高額になる傾向があるので、よく検討しましょう。
建設費用
一からお墓を建てる際は、区画の整備や墓石を組み立てる石積み工事などの建設費用を支払います。
柵の有無やデザインなどによって若干差が出ますが、基本的には20~30万円程度になるでしょう。
基本的には墓石を購入する石材店が施工するため、建設費用を単発で支払うことはありません。
見積もりの際は、何にどれだけの費用がかかるのか内訳までしっかり確認しましょう。
年間管理料
お墓を管理してもらうことに対して、一年ごとの管理料を支払います。
墓地や契約内容などによって値段は違いますが、数千円~2万円程度が一般的です。
特に格式の高い寺院などであれば、5~10万円ほどかかる場合も珍しくありません。
魂入れの儀式費用
お墓から遺骨を出す際に魂抜きの儀式をしたのと同じように、お墓に遺骨を納める際には魂入れの儀式を行うのが一般的です。
魂抜きを「閉眼供養」と呼ぶのに対し、魂入れは「開眼供養」とも呼ばれます。
ご先祖様や仏様に新しい地で安らかに眠ってもらうために、僧侶に読経してもらうのです。
その際、儀式の費用は1~3万円が相場ですが、納骨するための費用が一体につき3万円ほどかかるため、お布施代としてまとめて用意しましょう。
埋葬費用
前述の通り、納骨する際に埋葬費用が必要となります。
最近は魂入れを省略したり、自身で遺骨をお墓に納める人も増えており、そうした場合は費用を用意する必要がありません。
ただし、墓地によってはあらかじめ流れや料金が決まっている場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
檀家に入る費用
墓地を新設するのがお寺の場合、今後の法要やお葬式での読経などをお願いする意味も込めて、そのお寺の檀家になるのが一般的です。
中には費用がかからないお寺もありますが、基本的には入檀料として10~20万円ほど必要となります。
大きなお寺となると30万円以上かかることもあるため、こちらも事前に問い合わせておくと安心です。
一方、入檀を必須としていないお寺もあります。
その場合は費用がかからないため、こだわりがなく費用を抑えたいという人は近くにそういったお寺がないか探してみるといいでしょう。
お布施
お墓を新しく建てる際、さまざまな費用をまとめて「お布施」として支払うのが通説です。
特にお寺では何がいくら、という明確な決まりがなく、全て「相場」という考え方になります。
先に解説した儀式の費用や入檀料なども、その都度支払うのではなく、最終的にまとめてお布施という形で渡します。
そのお布施には、戒名料も含まれます。
お墓参りに行った際など、墓石に名前以外の長い文章のようなものが刻まれているのを見たことがあるでしょう。
それを戒名といい、仏教の世界で幸せに生きていくために付けられる名前とされています。
通常はお通夜の前に僧侶から言い渡されるため、すでに戒名を持っているケースも多いのですが、宗派が異なる場合は新しく付け直す必要があります。
その際は戒名料として30~50万円ほど必要となることを知っておきましょう。
その他にかかる費用
これまでにご紹介したのが、基本的に改葬する際には全員が支払うことになる費用です。
それらに加えて、遺骨を郵送で運ぶ場合や代行サービスを利用する場合の費用についてご紹介します。
郵送費
通常、お墓から取り出した遺骨は、自身で新しいお墓の場所まで運びます。
しかし、高齢化が進む昨今「遺骨が多くて重たい」「足腰が不自由」などさまざまな理由で、運びたくても運べないという声が聞こえるようになりました。
そんな時は、郵送サービスが利用できます。
遺骨を郵送することを「送骨」といい、日本郵便のゆうパックのみ利用が可能です。
料金は普段から使っているゆうパックと同様、箱の大きさと重さ、距離で計算されます。
ただし、通常のゆうパックとは異なり損害賠償制度が付かないことだけは理解しておいてください。
追跡サービスや有料セキュリティサービスは利用できるので、心配な方はオプションサービスを活用しましょう。
改葬代行サービス
お墓を自宅近くに移転する人が増えていることを受けて、改葬に関する作業や手続きを代行してくれる会社が急増しています。
墓石の購入費用などはもちろんこちらで用意する必要がありますが、時間のかかる手続きややりとりを引き受けてくれるということもあり、利用率も高くなってきました。
相場は30万円ほどで、書類手続き、お墓の解体作業、遺骨の転送などが含まれます。
また、お寺や霊園の管理者とのやりとり、例えば離檀料や入檀料の交渉など本音を言いにくいシーンまで代行してくれるのは嬉しいポイントです。
必要なサービスのみ利用することもできるので、自分たちでできること、難しいことと併せて検討するといいでしょう。
お墓を移転する際の費用のまとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事を読んでいただくことで、お墓を引っ越しさせる際に必要な手続きと、費用についてご理解いただけたと思います。
お墓を引っ越しするのは、決して簡単ではありません。
しかし、一旦大掛かりな作業をしてでも自宅の近くに移してしまえば、いつでもお墓参りすることができ、ご先祖様も喜んでくれるはずです。
「遠くてお世話が大変」と言う方も、この機会にお墓のお引越しを検討してみませんか。
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